プレスリリース
木藤俊一石油連盟会長 年頭所感 (2025年1月7日)
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1. 2024年の振り返り
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中東情勢は、イスラエルによるガザ地区への攻撃激化やイランとの対立など、一段と緊迫化する状況にあった。原油価格の高騰も懸念されたが、ドバイ原油は70ドル~90ドル/バレルの範囲で推移している。足元では70ドル台中盤と、やや落ち着いた水準で推移しているが、引き続き中東における地政学的リスク、さらにはトランプ政権のエネルギー政策の動向などに注視が必要と考えている。
一方、国内に目を転じると、元日に令和6年能登半島地震が発生した。石油業界は、地震発生直後から政府と24時間の連携体制を構築し、石油販売事業者の皆様とも連携しながら、被災地に必要な燃料供給を行い、エネルギー供給の「最後の砦」としての役割を果たした。
また、夏にはインバウンド向けジェット燃料油の供給問題が顕在化した。政府および物流業界などの関係業界と連携し、サプライチェーンの柔軟性の維持・強化を図り、供給に支障が生じないように努めた。
昨年末には、次期「エネルギー基本計画」および「GX2040ビジョン」の原案が提示された。石油業界として主張した、「エネルギー政策の基本は『S+3E』であること」、「2050カーボンニュートラルに向けて、事業者の投資予見性を高める支援の拡充と国民理解を醸成すること」、そして「石油・液体燃料の位置づけの明確化と、石油サプライチェーンを維持すること」が盛り込まれており、関係各位のご尽力に厚く御礼申し上げる。 -
2. 2025年の重要課題
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(1)石油の安定・安全供給確保 石油は一次エネルギー供給の約4割を占め、我が国の経済と国民生活を多方面から支える重要なエネルギーである。また、災害時においては、石油は可搬性・貯蔵性に優れた液体燃料であり、被災地に運び届けることが可能なエネルギーである。
ロシアのウクライナ侵攻が長期化し、中東情勢が緊迫化するなか、エネルギーの安定供給確保の重要性が改めて認識されている。
今後も大規模地震や様々な自然災害への備えが益々重要となる。石油がエネルギー供給の「最後の砦」としての責務を果たすべく、引き続き取り組んでいく。
脱炭素に向けた取り組みを進める上でも、石油の重要性が変わることは無い。石油の国内需要は減少することが見込まれるが、石油業界としては、官民一体でセキュリティ対策、レジリエンス対策の強化に取り組み、トランジション期においてもエネルギーの安定供給確保に努めていく。(2)気候変動対策 石油業界は、脱炭素社会の実現に向けて、カーボンニュートラル燃料である合成燃料、SAF(持続可能な航空燃料)、CO2フリー水素、アンモニアなどの革新的技術開発や社会実装にチャレンジしているほか、CCSの事業化に向けた取り組みも積極的に行っている。
さらに、次期エネルギー基本計画の素案において、内燃機関に係るガソリンの低炭素化・脱炭素化を進めるため、2030年および2040年に向けたガソリンへのバイオエタノールの導入拡大が示された。石油業界は、SAFの実用化や合成燃料の研究開発の推進に加えて、政府、自動車業界と連携し、バイオエタノールの導入拡大に向けた具体的な検討にも着手している。
石油業界としては、こうした政府の長期戦略に則り、経済成長と脱炭素化の両立に着実に貢献していくが、これらの実現のためには投資の予見可能性や低炭素・脱炭素燃料の需要創出などの多くの課題がある。これらの課題克服に向けては、引き続き経済産業省をはじめ関係省庁の皆様の強力なご支援が必要である。(3)税制 石油には、既に年間6兆円近い巨額な税が課せられている。石油連盟は、従来から石油に対するこれ以上の税負担に反対しており、引き続き全国石油商業組合連合会(全石連)の皆様とも力を合わせて断固反対していく。
なお、ガソリン税については、昨年11月に閣議決定された「国民の安心・安全と持続的な成長に向けた総合経済対策」において、「ガソリン減税(いわゆる暫定税率の廃止を含む)については、自動車関係諸税全体の見直しに向けて検討し、結論を得る」と明記された。また、昨年末の3党幹事長合意書においては、「いわゆるガソリンの暫定税率は廃止する」という文言が盛り込まれた。ガソリン税の本則税率上乗せ分の廃止については、消費者の負担軽減の観点から、石油業界として長年にわたり要望している。今後、税が課されていないEVなどへの課税や、自動車用エネルギーに係る課税の公平性確保についても実現すべく、政府において検討されることを期待している。 -
3. 「サステイナブルなエネルギーを社会に」エネルギーはコモディティのベースであり、Sustainable(持続可能)でありAvailable(利用可能)であり、Affordable(入手可能)でなければ、その役割を果たせない。
石油業界は、エネルギー供給の担い手として、将来の長きにわたって消費者の皆様に選ばれるよう、GXに向けた革新的技術開発や社会実装に向けた取り組みを加速化するとともに、安定供給という重責を果たして参る。
以上