プレスリリース
木村康石油連盟会長 年頭所感 (2016年1月5日)
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昨年の石油業界の出来事について
昨年の石油業界を振り返ってみると、「原油価格の下落」、「企業再編に向けた動き」等、事業環境が大きく変動した一年。
原油価格については、ドバイ原油の年平均価格では、2011年以降、4年連続でバレルあたり約100ドルであったものが、2015年平均は約50ドルまで下落。約4年間続いた「100ドル時代」からすると、50ドルでも信じられない中、足元では更に下落し、30ドル台前半と、11年半ぶりの水準で低迷。
「企業再編に向けた動き」としては、昨年11月に昭和シェル石油と出光興産が、12月にはJXホールディングスと東燃ゼネラル石油が、それぞれ経営統合に関する基本合意書を締結。
石油製品の国内需要が減少する見通しの中、「国際的な競争力を有する強靭な企業集団」となることが、「喫緊の課題」として、今まさに石油業界に求められていることと思料。 -
今年の石油業界の状況と政府への要望について
(1) 原油価格について
原油を輸入しているわが国にとって、価格が安いこと自体は決して悪い話ではないものの、今の価格水準が長期間続けば、資源国経済への悪影響や再生可能エネルギーの普及停滞など、世界経済の混乱や地球温暖化対策の遅れを招き兼ねない。また、油田等の開発投資の停滞や石油需要の喚起により、需要が供給を上回ることが予想され、将来、原油価格が高騰する可能性が高まる。今後、世界の原油市況が、需要側・供給側双方にとって満足できる「安定的な価格水準」に向かって、早期に落ち着いていくことを期待。(2) 経営基盤の強化
石油は私たちの生活になくてはならないエネルギーであり、石油の「安定供給」が我々石油業界の責務。この「安定供給」には、「経営基盤の強化」が何より重要。コア事業である石油精製・販売事業が縮小していく中にあって、実は、これが最も困難なことであるが、「経営基盤の強化」の達成に向けて、主なポイントは以下の3点と思料。
①構造改善と国際競争力強化
石油業界は、構造的な石油需要の減少に直面し、設備の最適化に取り組んでいるが、今後も、構造改善の動きを加速させる必要があると思料。「企業再編に向けた動き」も、この構造改善に向けた施策のひとつ。また、国際競争力強化の観点からは、製油所間、あるいは石油化学との連携や、より付加価値の高い製品への生産シフトなどに取組むことがますます重要。
②製油所の稼働信頼性の向上
石油各社は、製油所の安全対策・保全対策には、自主行動計画を定めるなどして万全を期しているが、今後はメンテナンスの効率化が課題であると認識。具体的には、リスクの大きさに応じて経営資源を集中させる考え方、すなわち「リスクベースド・メンテナンス」が重要であり、これは経産省で検討されている「保安規制のスマート化」あるいは「IoT」、「ビッグデータの活用」にも通じるものと思料。
③総合エネルギー産業化
昨年は、電力・ガスシステム改革の方針・道筋が示され、今年4月には、いよいよ電力小売市場が全面自由化される。エネルギー産業のありようは、今まさに大きく変わろうとしており、石油業界としては、「消費者の求めるエネルギー」を供給できる産業になっていくことが重要。石油事業をコアにしつつ、電力やガスへの事業参入等を行うことで、「総合エネルギー産業化」を目指していく。(3) 政府への要望
エネルギーミックスでは、石油は2030年において現状の約40%より10%シェアを落とす30%とされたが、天然ガスや石炭を抑え、依然としてエネルギーの大宗を占めることが見込まれている。また、エネルギー基本計画でも、石油はエネルギー供給の『最後の砦』との評価を頂いており、これまで同様、「安定供給」が重要課題であることから「経営基盤の強化」の取組みに対する政策支援の継続をお願いしたい。また、「エネルギーシステム改革」の確実な実行と、現在検討されている制度の詳細設計において、エネルギー間及び事業者間の公平な競争環境の整備が図られるようお願いしたい。 -
おわりに
東日本大震災から間もなく5年が経過。当時、石油は、「災害対応力に優れた分散型エネルギー」として広く認識された。その後、石油業界では、製油所等の耐震・液状化対策、系列BCPの策定、「石油供給連携計画」の策定、関連する訓練の実施等、いわゆる「強靭化対策」に全力で取り組んできたが、今後も、これら対策の実効性向上に努めていきたい。また石油の「安定供給」という点では、産油国からの供給途絶に備えるだけでなく、消費者の皆さんに直に接しているSSまでのサプライチェーンの維持・強化を考える必要がある。そのため、販売業界の方とは、今後もいろいろな知恵を出し合いながら、「和」の心を大切に、共に、安定供給・安定需要・安定収益を確立し、消費者に選ばれる強靭な石油産業を目指して、引き続き「石油の力。」を訴えていく所存。
以上