プレスリリース
木村康石油連盟会長 年頭所感 (2017年1月5日)
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世界情勢・国内情勢
世界では、昨年、社会の変化が顕著となる出来事が多く起こった。その象徴的な出来事がアメリカ大統領選挙におけるトランプ候補の勝利。
従来からの様々な施策、または常識として定型化していた価値観が見直される機運が高まっており、停滞感・閉塞感がある社会は、必ず変化へと舵を切るという現代社会の潜在的な変革願望が顕在化してきていることから、2017年は歴史的な転換点になると予感。
日本経済は、安倍政権の経済政策により、個人消費は底堅く推移し、雇用情勢は改善の傾向が続くなど、緩やかながら持ち直しの方向に進んでいる。今年は、足元の資源価格上昇・円安傾向も相俟って、回復基調を軌道に乗せ、実感できるものに出来るかが課題。 -
原油市場・原油価格の動向
原油市場は、9月のOPECの減産合意、11月の各国別生産割当の決定、12月の非OPECとの協調減産合意など、今回の合意内容は、時代の変化を反映し、概ね市場が期待した通りになったとの見方もある。これは、一昨年来の原油価格低迷が産油国経済などに与えた影響の大きさから、変化せざるを得ない状況になっていた背景がある。
今後の原油価格動向については、需要側、供給側、双方にとって、満足できる「安定的な価格水準」を模索する動きが強まっていくものと思料。
2017年の原油需給バランスは、産油国の減産合意を反映し、年初から供給過剰は解消、需給均衡が早期化することから、原油価格は、ドバイ原油で、今後、60ドルを前後しながら、堅調に推移し、2017年の年末に向けて、65ドルを窺う水準になると予想している。 -
国内石油業界の動向
一方、国内石油業界動向は、燃料油内需見通しで、2020年度まで年率▲1.7%減少する見込みであり、石油業界を巡る経営環境は依然厳しい状況に置かれている。そうした中、本年3月末、エネルギー供給構造高度化法の第2次告示対応の期限を迎える。現時点では、最終的な評価はできないが、高度化法によって各社の取り組みが活発化し、事業再編の動きも含め、一定程度の構造改善が進みつつある。
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経営基盤の強化
エネルギーミックスでは、2030年においても、一次エネルギー供給における石油のシェアは、最大の30%とされている。またエネルギー基本計画では、石油はエネルギー供給の「最後の砦」と位置付けられている。したがって、今後も、石油の安定供給は、平時・緊急時を問わず、国の安全保障に係る重要課題であることは変わりない。
石油の国内需要は構造的な減少が見込まれているが、そういう事業環境の中でも、この社会的要請に応えていくためには、「経営基盤の強化」が不可欠と考えている。そのため石油業界では、以下の3点を重要課題とし、2017年は、次のステップに踏み出す正念場の年になるものと、気を引き締めている。 -
石油業界の重要課題
(1) 国際競争力
石油業界は、これまで構造改善、設備の最適化に取り組んできたところ。企業再編に踏み込むなどの動きも、構造改善に向けた施策のひとつと認識している。但し、燃料油内需の減少は、長期的な問題であるため、先を見据えて石油精製販売事業の将来像を検討する必要がある。その検討の基礎となるのは、元売各社が描く成長戦略であり、製油所の高付加価値化など本質的な意味での高度化が求められている。つまり、製油所の国際競争力強化に向けては、これまでの設備能力削減ありきではなく、競争力ある設備を活用し、アジア新興国への輸出や、石化シフトなどを進めることが重要。
また、製油所間あるいは石油化学との連携を進めるとともに、超重質原油の処理、石油製品の高付加価値化などに取り組むことで、国際競争力を強化していきたいと考えている。(2) 総合エネルギー産業化
電力・ガスシステム改革にあたっては、今後、残された課題の検討と、運用面で公平な競争環境が実現を引き続きお願いすると共に、石油業界としては、総合エネルギー産業化に向けて、ガス小売りについても積極的に検討し、経営基盤の強化に繋げていきたいと考えている。(3) 強靱化対策
昨年4月に、熊本で地震が発生した。被災された方々には、改めてお見舞い申し上げる。熊本であのような大きな地震が起きることは予期していなかったが、その中で、石油供給については、概ね安定供給に貢献できたものと評価している。また同時に、改めて緊急時における石油供給の重要性を認識したところ。
東日本大震災から5年が経過したが、今後とも、南海トラフ地震、首都直下地震などに備えて、引き続き、製油所などの耐震・液状化対策、系列BCPのブラッシュアップ、石油供給連携計画に関連する訓練の実施などに取り組んでいく。 -
おわりに
時代の変化がどうあろうと、引き続き石油がエネルギー供給の大宗を担い続けるために、時代の変化を敏感に読み取るとともに、業界を挙げて、経営基盤の強化をなんとしても成し遂げなくてはならない。また、「安定需要・安定収益、そして安定供給」を実現し、消費者に選ばれる強靭な石油産業にならねばならない。今年がその正念場であり、「石油の力。」を示すべき年と、決意を新たにしている。
以上