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月岡隆石油連盟会長 年頭所感 (2019年1月7日)

  石油連盟
  1. 世界情勢・国内情勢

     世界経済は、米中の貿易摩擦や欧米の金融緩和策の縮小など不透明感が増しており、日経平均は年明け2万円を割り込んでのスタートとなったが、その後大幅反発した。日本経済は、2012年12月から始まった景気拡大局面が持続し、この1月にはいざなみ景気を超え戦後最長の74か月に及ぶ景気回復になると予想されるなどファンダメンタルズは引き続き堅調であり、2020年のオリンピック、2025年の大阪万博に向けて、内需を軸とした更なる成長が期待できるものと考えている。

  2. 原油市場・原油価格の動向

     原油価格については、昨年はイラン問題の懸念などから10月前半にWTIベースで75ドル/バレルまで上昇した後、イラン経済制裁の適用除外措置の発表、更には世界経済の減速懸念から年末に40ドル台前半まで下落する等、不安定な動きがみられた1年であった。年末の「OPECプラス」の協調減産合意後の動向やシェールオイルの動向を注視する必要がある。
     2019年は、世界経済の減速を懸念する声も聞かれるが、石油需要の引き続きの伸びと昨年決定したOPECプラスの減産を受けて、原油価格は緩やかに上昇していくものと見込んでいる。

  3. 国内石油業界動向とエネルギー政策における石油の位置づけ

     国内の石油業界動向については、昨年はこれまでの業界再編や高度化法対応等により生産設備の最適化が進んできたことや好調な海外市況に支えられたこともあり、国内市場が安定的に推移し、収益環境は改善されたが、引き続き国内需要の構造的な減少が見込まれている。
     このような状況において、私は石油業界として改めて「消費者に選ばれる石油」であり続けるよう努めていくことが最大の使命であると考えている。そのために、今年も、石油業界の経営基盤の強化、強靭化、石油サプライチェーンの維持に全力で取り組むことが重要である。
     「第5次エネルギー基本計画」では、石油は引き続き「今後とも活用する重要なエネルギー源」と位置付けられ、2030年も石油は一次エネルギー供給の最大シェアを占めるものと見込まれている。国内需要が減少する中でも、その位置づけに応え、平時のみならず緊急時においてもしっかりと安定供給の責務を果たす石油業界であり続けなければ、「消費者に選ばれる石油」、「石油はエネルギーの主役」たり得ない。そのために、内向きの縮小均衡ではなく、将来の石油産業のあるべき姿を見据え、他業界や海外への進出・連携など、従来の枠の外にも目を向けた攻めの姿勢で、積極的に行動していかなければならない。

  4. 2019年の重要課題3点

    (1)「製油所の国際競争力強化」
     これまで内需が減少する中、石油業界は構造改善、設備の最適化、そして企業再編にも取り組んできた。本年4月の昭和シェル石油と出光興産の経営統合により、さらにもう一段階進むことになる。我々石油業界は、引き続き安定供給の責務を果たすため、国際的な石油需要構造の変化にも対応し、海外の最新鋭大型製油所と伍して戦っていかねばならない。そのためには、設備の高度化、石化シフト等を進めるとともに、資本の壁を超えた製油所間や石油化学との連携、コンビナート連携を進めるなど、不断の努力が必要である。
     また、海外事業への参入、総合エネルギー産業化への取り組みなど、各社がそれぞれの強みを生かし、従来の枠を超えた新たなビジネスチャンスを追求することも必要である。石油連盟会長として、これらの環境整備に努めていく。

    (2)「更なる強靭化」
     昨年は、福井豪雪、大阪北部地震、西日本豪雨、台風21号、北海道胆振東部地震と災害の多い年となり、そのたびごとに石油の有用性・重要性が再認識された。特に台風21号による想定を超える高潮や、北海道地震でのブラックアウトなどはあらたな課題を浮き彫りにした。また、北海道では石油火力の有用性が改めて認識され、これら一連の経験から、安定供給を維持するための備えには、終わりがないことを痛感した。
     今後も石油の役割を果たすため、我々石油業界は製油所・油槽所の非常用発電機の増設・強化、耐震化・液状化対策の拡大に向けた検討を進める等、昨年の経験・反省点を踏まえて「更なる強靭化」に努めていき、政府の適切なご支援も賜りたいと考えている。
     また、全石連の皆様と「満タン&灯油プラス1缶運動」で協調するなど、広く消費者の皆様に、平時からの石油利用による石油サプライチェーン維持、地域のSS存続の必要性、自衛的備蓄の重要性も訴えていく。

    (3)「税制」
     石油には、既に5兆円以上もの巨額な課税がなされている。昨年、全石連の皆様と共催した総決起大会でも決議した通り、業界を挙げてこれ以上の増税には断固反対である。
     環境省では、カーボンプライシング導入への動きを強めている。また自動車車体課税の軽減が実現する中、その財源の穴埋めとして燃料課税増税の話も出たとも聞く。これらの動きに対し、それぞれ3E+S、特に「安定供給」への配慮、公平性の原則や国民的コンセンサスの必要性などを強く訴え、断固反対していく。
     さらに、昨年全石連の皆様と共同で欧米の走行課税について調査した。エネルギーに課税されていない電気自動車などの普及が進む中で、自動車用燃料・エネルギーに対する課税の公平性の確保実現に向けて、速やかに走行段階に係る税制度の検討が開始されるよう関係方面に働きかけていく。
     これら税制に係る諸活動には、引き続き全石連の皆様や関係業界との連携、国会議員の先生方、経済産業省の皆様のご理解・ご支援が不可欠である。

  5. おわりに

     様々な時代の変化が生じている中、これから20年、30年先も石油がエネルギーの主役であり続けるために、平時のみならず緊急時も安定供給の責務を果たし、「消費者に選ばれる石油」であらねばならない。そのために業界を挙げた不断の努力により国際競争力を一層高め、強靭な石油産業を構築していく、新年にあたって、その決意を新たにしているところである。


以上

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