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杉森務石油連盟会長 年頭所感 (2021年1月5日)※1月7日修正版

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  1. 2020年の振り返りと今年への期待

     昨年は、世界が新型コロナウイルスに振り回され、石油業界としても、需要の急減や原油価格の暴落など厳しい経営環境に直面した1年であった。年末からの感染拡大を受けて、政府は緊急事態宣言の再発令も検討するとしているが、石油業界としては、引き続き感染予防対策に取り組み、石油製品の安定供給に万全を期したい。他方で漸く、各国でのワクチン接種も本格化するなど、収束に向けての動きも出てきている。世界の経済活動に関する不透明感も解消に向かい、今年は、コロナ禍を越えて、内外経済が回復軌道に乗り、また、東京オリンピック・パラリンピックも無事に開催できる、明るい年となることを期待している。
     昨年の国際石油情勢を振り返ると、年明け早々にイラン革命防衛隊司令官の殺害と、同国による在イラク米軍基地攻撃、最近ではイラン核科学者暗殺など緊張が高まる一方、新型コロナウイルス感染拡大により世界石油需要は、かつて経験したことのない大幅な減少となった。
     原油価格は、イランを巡る動きから年明けにWTIが64ドル台まで急騰、その後、新型コロナウイルスの感染拡大の中で、3月にはOPECプラスの協調減産体制が崩れたこともあって20ドル台と暴落し、4月にはWTI原油が史上初のマイナスとなる「マイナス37.63ドル」に至るなど、想定をはるかに超える事態となった。その後は、経済活動再開などにより需要回復が進み、供給面では、5月からのOPECプラスの協調減産再開・延長などもあって、概ね40ドル台で推移し、足下では各国でワクチン接種が始まったことによるコロナ禍からの経済回復への期待から、ドバイ原油が50ドル前後に達するなど上昇の兆しが見えている。
     一方で、昨年は各国が競って電動化等の厳しいCO2排出抑制方針を示すなど、気候変動対策が重要課題として急速に関心が高まっている。わが国においても、昨年10月には菅総理による「2050年カーボンニュートラル宣言」が発表され、今年は「エネルギー基本計画」の見直しに関する議論が本格化するなど、エネルギー・環境政策に対する注目度は今後増々高まっていくと考えている。

  2. 2021年の重要課題

    (1)エネルギー政策における石油の位置づけと石油の安定供給確保

     丁度10年前の東日本大震災の際には、国中が大混乱の中、石油をはじめとするエネルギーを確保し、消費者・被災地に届けることに奔走したこと、S+3Eの重要性を再認識したことは、無資源国のわが国は忘れるべきではないことを、申し上げたい。
     社会経済構造の変化やカーボンニュートラルの動きなどにより石油の国内需要は次第に減少することが見込まれているが、石油は引き続き、運輸・民生・業務部門を中心に国民経済を支え、地震や台風等の自然災害では、エネルギー供給の最後の砦となるなど、平時・緊急時問わず重要なエネルギー源であることは変わりない。
     また、世界的な資源獲得競争・中東情勢の不安定化・激甚化する自然災害・新型コロナウイルスの感染拡大等に備え、官民一体となった、セキュリティ対策・レジリエンス対策の強化、さらに安定供給を支える石油産業の経営基盤強化への取組みは引き続き重要課題である。こうした、石油の役割や位置づけについて、改めて「エネルギー基本計画」の中に明確化されるように働きかけていく所存である。

    (2)気候変動対策

     EUを中心に世界がグリーン化に向けた動きを加速する中、わが国においても、2050年カーボンニュートラル宣言ならびにグリーン分野研究支援に対する2兆円の基金を創設すること、更に「グリーン成長戦略」を発表した。今年発足する米国のバイデン政権も政策のグリーン化を図るとみられ、このような中での「カーボンニュートラル宣言」や「基金創設」、「グリーン成長戦略」は我が国の立ち位置を内外に示すものであり、高く評価したい。
     石油連盟は、2019年度に、石油系燃料の低炭素化や革新的技術への取組み等を内容とする「石油産業の長期低炭素ビジョン」を取りまとめたところであるが、現在これをさらに強化し、前向きな挑戦とするべく、2050年のカーボンニュートラル実現に向けての具体的な方策を検討している。CO2フリー水素やバイオ燃料など非化石エネルギーの拡大、合成燃料であるe-fuelやCCS・CCUSなどに代表されるカーボンリサイクルに係る革新的技術の社会実装がそのカギと考えている。業界を挙げて、将来の製油所がどのような絵姿になっていくべきかをイメージしながら、これらの数多くの技術的・経済的課題の解決に向けた具体的な行動プランを策定し、できるだけ早期に示したいと考えている。
     また、自動車の電動化に向けた動きについても注目する必要がある。「グリーン成長戦略」において、政府は2030年代半ばまでに乗用車の新車販売を全て電動車にするとの目標を発表した。しかしながら、これは2030年代に全ての自動車が純電動車になるということではなく、ガソリン需要が途絶するということではない。石油業界は、このような引き続き需要が残るガソリンのCO2フリー化に向けた、合成燃料(e-fuel等)など新技術の開発に取り組んでいく。また、サービスステーションについても、ガソリンだけではなく、充電・水素をはじめ多用なサービスを提供する場として活用し、「インフラ導入拡大」にも貢献できるよう、今後もネットワーク強化に努めていく所存である。

    (3)税制

     昨年末にとりまとめられた税制大綱に炭素税等は織り込まれなかったものの、「グリーン成長戦略」ではカーボンプライシングなどの経済的手法について「新たな制度も含め躊躇なく取り組む」としている。今年は、このような気候変動対策に向けた動きの中で、環境省はじめ、本格的なカーボンプライシングの議論が始まることが予想される。
     石油には既に年間5兆円を超える巨額な税が課せられており、単純な課税強化は、技術開発の原資を奪い、エネルギー価格の上昇や消費者負担の増加に繋がり、我が国全体の産業競争力を削ぐものと危惧している。このような「公平性・排出抑制効果」などの課題については、専門的・技術的な議論を尽くすべきであり、単純な課税強化の動きに対しては、全国石油商業組合連合会をはじめ、関係業界の皆様と力を合わせ断固反対していく所存である。
     他方、大綱にカーボンニュートラル税制やDX投資に係る減税措置など、石油業界でも有効活用できる制度が盛り込まれた。各社ともこれらの制度を活用し積極的に将来に向けた投資を進めていくものと考えている。
     また自動車用の電気や天然ガスには、ガソリン税・軽油引取税のような高額な税が課されておらず、公平性を欠いたものとなっている。徴税方法も含め、公平な課税の実現に向け、引き続き働きかけていく。

  3. おわりに

     これらの諸課題の解決に向けて、関係者の皆様と連携して取り組んでいくとともに、将来にわたっても、安定供給や気候変動問題対応への責任を果たしていける石油業界、「サステイナブルな石油」の実現を目指していく。年頭にあたって、その決意を新たにしているところである。


以上

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