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木村康石油連盟会長 年頭所感 (2018年1月5日)

  石油連盟
  1. 世界情勢・国内情勢

    世界では、欧米を中心に、経済は持続的な成長を遂げており、その足取りの堅実さも増している。一方で、米国がTPPやパリ協定からの離脱を表明するなど、昨年は「変化」に向けた動きが徐々に顕在化した1年でもあった。
    今後も緩やかな景気回復が続くことが期待されているが、中東や北朝鮮における緊張の高まりなど、引き続き政治面のリスクに伴う経済情勢の変化を注視しなければならないと考えている。
    また、日本経済は、好調な世界経済を背景に輸出が伸び、設備投資や個人消費も底堅く推移しており、景気は回復の軌道を維持している。この堅調な経済をいかに持続できるかが今後の課題であると言える。

  2. 原油市場・原油価格の動向

    原油価格は、昨年秋以降、60ドル台で推移するなど、「安定」の兆しが見えてきた1年であった。これは、昨年11月にOPEC・非OPECの協調減産の延長が合意されたことなど、主要産油国による需給均衡に向けた強い意志表示・行動があったことをはじめ、産油国・消費国の関係者が納得できる安定的な価格レベルを模索してきた結果、このような水準に落ち着いてきている。
    2018年の世界需要は、引き続き堅調に推移することが見込まれている一方、供給面は協調減産の継続実施により、需給バランスの改善が想定されている。
    原油価格上昇に伴う米国シェールオイルの生産動向には注視する必要はあるが、今年1年は、この安定が続くことを期待し、私自身、原油価格は、60ドル台で推移するものと考えている。

  3. 国内石油業界動向

    国内に目を向けると、石油業界は、これまで経営基盤の強化を喫緊の課題として、最優先に取り組んできた。昨年は、国際競争力強化、総合エネルギー産業化を目指すとともに、事業再編・企業統合などを進めてきており、石油業界は「新たなステージ」に入ったと言える。
    国内の石油需要は、足元では底堅い景気動向を反映し、ガソリンはほぼ前年並み、軽油は前年実績を上回り、灯油は寒さの影響で好調であるなど、比較的堅調に推移している。しかし、中長期的には、人口減少、自動車の燃費向上などの影響で、内需は緩やかに減少していくことが見込まれるなど、厳しい経営環境に直面している。

  4. 重点課題3点

    (1)エネルギー政策における石油の位置づけについて
    現在のエネルギー基本計画、エネルギーミックスでは、2030年においても、一次エネルギー供給における石油のシェアは、最大の30%とされ、また、石油は「今後とも活用していく重要なエネルギー源」、エネルギー供給の「最後の砦」と位置づけられている。
    そうした中で、昨年から2030年に向けたエネルギー基本計画の見直しの議論が開始されている。現行計画の骨格は変えずに、進捗確認や課題の洗い出しを行う方針とのことだが、エネルギー密度が高く、可搬性・貯蔵性・利便性に優れた石油の特性を踏まえ、現行の「石油の位置づけ」を堅持していただくようお願いしたい。
    また、2050年を見据えたエネルギー情勢懇談会では、地球温暖化対策を踏まえ、将来の社会構造の変化を注視しつつ、エネルギーの安定供給の視点も含め幅広い議論をお願いしたいと考えている。

    (2)「国際競争力強化」
    これまで石油業界は、構造改善、設備の最適化に取り組んできたところであるが、今後は、競争力ある設備を活用し、輸出や石化シフト、さらには、資本の壁を超えた製油所間あるいは石油化学との連携を進め、国際競争力をさらに強化していくことが重要と考えている。

    (3)「石油関係税制」
    税制に関して、今後の大きな課題として、地球温暖化対策の観点から、大型炭素税などの意見が根強くあることが挙げられる。既に、石油には5兆円以上の課税がなされている。これ以上の増税、消費者負担の増加には反対であり、今後も、業界を挙げて反対活動を展開していく。
    また、最近、電気自動車(EV)などが注目を浴びており、国内の台数も10万台を超えるまでになっている。本来、道路の維持補修などの費用は、ガソリンや軽油のユーザーだけでなく、自動車のユーザーが公平に負担すべきものであり、公平な課税の実現に向け取り組んでいく。

  5. おわりに

    昨年、私は「石油業界が新たなステージに入った」と申し上げた。
    石油業界は新しいステージに入り、「安定」に向かいつつあると感じている。エネルギー産業は、安定的、効率的に供給し続けることが、社会的使命であり、「安定」の次の課題は「継続」することである。
    引き続き、石油がエネルギー供給の大宗を担い続けるために、業界を挙げて経営基盤の強化を成し遂げ、「安定」を「継続」に結び付けなくてはならない。
    「安定需要・安定収益、そして安定供給」を実現し、消費者に選ばれる強靭な石油産業にし、「石油の力。」を示すべき年と、決意を新たにしているところである。


以上

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