石油連盟 Fuel+

お知らせ

プレスリリース

月岡隆石油連盟会長 年頭所感 (2020年1月7日)

  石油連盟
  1. 多様なリスクへの備え

     昨年1年を振り返ると、国内では大型台風に伴う強風・豪雨・洪水等により、広い地域でこれまで想定しなかった被害が発生した。海外に目を向けると、世界経済の不透明感に加え、世界の石油関係者を震撼させたサウジアラビアの石油施設への攻撃等、中東情勢の不安定化への懸念が高まったことに加えて、年始早々米国によるイラン革命防衛隊司令官の殺害というニュースが飛び込んできた。中東にある米関連施設やホルムズ海峡を航行する船舶等がイランの攻撃対象になる可能性があるとの報道もあり、米国とイランの緊張の更なる高まりは、世界の原油の安定供給への大きなリスクになる。昨年は、「多様なリスクへの備え」の重要性を痛感した1年だったが、本年もこのようなリスクは、いつでも起こりうるものとして、その対応に終わりはないとの心構えが必要である。

  2. 2020年の重要課題3点(3E+Sの観点から)

    (1)石油の安定供給確保

     国内石油需要は、少子高齢化や車の燃費改善等から、今後も構造的に減少することは、避けられない。しかし、無資源国のわが国にとって、エネルギーセキュリティー上、「最後の砦」の役割を担う石油の安定供給の重要性は、これからも変わらない。一方、原油価格は、世界経済の動向や地政学リスク等、様々な混乱要因もあり価格予測が難しい状況になっているが、安定を期待している。
     価格面での安定もさることながら、わが国にとっては、中長期的な石油の安定確保は重要な課題である。2040年においても石油は引き続き、世界の一次エネルギーの最大シェアであることが見込まれるなか、特に、需要が増大する中国・アジア等の新興国との資源獲得競争が激しくなっており、政府による資源外交の重要性がますます高まっている。昨年まとめられた、総合資源エネルギー調査会の「新・国際資源戦略」への提言において、人材交流や資源開発等を有機的に組み合わせた総合的な資源外交に言及されたことは時宜を得たものであり、今後の戦略とりまとめには、我々も貢献していく所存である。
     また、これまで、わが国の中東依存度の高さに懸念が指摘され、石油業界も調達先の分散化は重要と考えている。しかしながら原油の経済性や精製装置との相性などもあって、簡単なことではない。
     さらにリスクへの備えとしては、石油備蓄が有効であるが、今後は、官民の連携強化を通じた機動性の向上を図りつつ、今ある石油備蓄を有効活用し、わが国だけでなくアジア全体のセキュリティー強化に繋げていくことが重要だと考えている。

    (2)地球温暖化対策

     昨年末に行われたCOP25では、気候変動対策の具体的合意はなされなかったものの、化石燃料排除の意見が多く出され、また我が国では「化石賞」が象徴的に大きく報道された一方で現地では冷静に現実的な議論も行われていたと聞いている。
     欧州を中心に「サステナブルファイナンス」はじめ、過度な温暖化対策の声が大きくなっているが、これが世界全体の流れになることを懸念している。現実に即しないルールの下で、世界のエネルギー需要に応じた化石燃料への投資ができず、エネルギーの安定供給が損なわれることは絶対に避けなければならない。9年前、東日本大震災の際には、わが国は、老朽石油火力をフル稼働し、化石燃料の確保に奔走し、何とか国難から脱した事実を忘れるべきではない。わが国は、島国であり、こうしたレジリエンスも考慮したエネルギーのベストミックス、化石燃料の有効活用こそ必要な政策である。
     また、わが国のエネルギー効率は世界最高水準にあるが、これはこれまでの先人達の省エネや環境対策技術の成果である。これからも更に非連続的なイノベーションを通じ「環境と成長の好循環」の実現に日本が真剣に取り組んでいること、それを通じて世界に貢献していく覚悟を堂々と訴えていくことが重要だと考えている。石油連盟としても、昨年まとめた「長期低炭素ビジョン」に沿って、革新的な技術開発も含めて着実に対策に取り組んでいく所存である。
     なお、近年、炭素税などカーボンプライシングの議論が盛んに行われているが、新たなエネルギーへの課税強化は、技術開発等の原資を奪い、エネルギー価格の上昇を招き、消費者負担の増加、我が国全体の競争力を削ぐものと危惧している。こうした動きには、粘り強く、全石連、関係業界の皆様と力を合わせて、断固反対していく。

    (3)経営基盤強化

     これまで石油業界は、経営基盤の強化に向けて、構造改善、設備の最適化、そして企業再編にも取り組み、昨年4月には昭和シェル石油と出光興産の経営統合も実現した。再編による経営基盤の強化を通じて、各社とも様々な経営環境の変化、リスクに柔軟に対応し、引き続き安定供給の責任を果たすことを目指している。
     今後とも、石油業界は、国際競争力強化に向けて、更なる設備の高度化、石油化学シフト、資本の壁を超えた製油所間や石油化学との連携等を進め、さらには、海外事業への参入、総合エネルギー産業化への取り組みなど、各社がそれぞれの強みを生かし、攻めの姿勢で新たなビジネスチャンスを追求していく所存である。同時に、引き続き今後想定される災害など非常時への備え、即ち、更なる強靭化対策に取り組み、平時のみならず非常時もサプライチェーンを健全に維持・強化して、エネルギー供給の「最後の砦」である石油の責任も果たしていく。

  3. おわりに

     非常時の備えとして、昨年は「広報活動」の重要性を実感した。台風19号の前にメディアの皆様から、事前の自動車燃料の満タンを推奨していただき、台風襲来前に対応が進み、台風の後は、大きな混乱がなかったことが、強く印象に残っている。今後も、全石連の皆様と「満タン&灯油プラス1缶運動」等で協調するなど、広く消費者の皆様に平時からの備えを訴えていく所存である。
     また、これらの課題に対して、政府や関係業界の皆様のご支援もいただきながら、石油業界としてしっかりと取り組んでいく。これにより、引き続き石油の安定供給や地球温暖化問題への対応の責任を果たし、消費者の皆様にも安心して石油を、お使いいただける環境を維持することで「消費者に選ばれる石油」であり続けることを目指していく。年頭にあたって、その決意を新たにしているところである。


以上

© 2022 Petroleum Association of Japan. All rights reserved.